【書評】石川完爾著『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』

人生においてどんなことをしていきたいか?と聞かれたら、おそらく「お金の心配もせずに宗教書を読み耽っていたい」と答えるかもしれないSayasayanです。

宗教と聞くと怪しく聞こえてしまうのが日本の常ですが、基本的に宗教の教えというのは生活規範がまとまったものです。

つまり、どういう人間であるべきか?に対する答えが書かれているといえます。

でも、人間は忙しいとなかなかそれを読む時間もなく、一生を終えてしまうわけです。

今回は古今東西いろんな宗教がありますが、その中でも最古の宗教の一つ、ユダヤ教の教えがつまったタルムード(聖典である『旧約聖書』のさらに詳細な議論や解釈を示した書)のエッセンスを教えてくれる本をご紹介します。

それが、石川完爾著『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』す。

ユダヤ人が知恵(Wisdom)を重視する理由

親が残せるのは財産などではなく教育

これはユダヤ人が歩んできた歴史にも関係があると思うのですが、一度得られたものは再び奪われる可能性があるので、ユダヤ教では大変教育を重視するのですが、財産ではなく子どもが自分一人でも生きていけるように知恵を授けるのが重要と考えられているそうです。

そのために、タルムードの中にはいくつも説話があるのですが、口(議論・交渉etc.)の重要性というのが説かれています。

時としてそれは、神との会話にも現れており、デボラという女性の話でいえば神が彼女の夫となる人間を何度も死へ誘うため、3人目の夫を死の天使が連れていこうとするときにトーラー(モーセ五書)の一説を出して神にも食い下がるということをやってのけるなんてお話もあるぐらい。(その結果、神は夫を連れていくことを諦め、デボラは幸せな結婚生活を送ったとのこと。)

以下に口が生きていくための最大の武器であるのか?というのを説明しており、著者としては日本人の議論・交渉下手というのはよくないという意見をお持ちのようです。
世界基準からすると、日本人の議論を好まない雰囲気は異質に見えるのかもしれませんね。

リスクへの考え方と不幸への備え

最悪の事態を想定する&リスク分散やリスクの大小の中で最適解を見つける

また、子どもの教育に関しては、説話を読み聞かせながらすべての答えを言わず、常に親が子に「WHY?」と尋ね、思考力を養うといった記述もありました。

特に重要なのはリスクとの付き合い方で、まずは最悪の事態を想定し、それに備えることが重要と説くようです。

七匹の太った牛と七匹の痩せた牛という説話の中では、ファラオが七匹の太った牛を後から七匹の痩せた牛が食べてしまうという夢をみて、それをヘブライ人ジョセフが大豊作の後に大飢饉が来ることだと夢解きをし、そのために備えるように助言するといった場面があります。

盛り上がっている時こそ兜の緒を引き締め、おごらずに過ごすことが大事ということみたいですね。
(日本のバブルの頃の無駄なお金の使い方とか、今の世代は本当に考えられないだろうなぁってしみじみ思います。)

そして、日本では「3本の矢を束ねれば折れない」という毛利元就の言葉があります。
これは兄弟力を合わせて事に取り組むようにという教えですね。

これに対してユダヤ系財閥のロスチャイルド家の家訓は「5本の矢は一本一本バラバラにせよ」なんだとか。

矢を束ねてもそれを凌ぐ不幸が訪れればどうにもならない、それよりリスク分散をしおけば5人の兄弟誰かが生き残るという発想だそうです。
日本式の考え方とは違いますし、またリスクも単純に分散しろとか回避しろと言っているわけではなく、リスクの振れ幅を理解し、最適解を導き出すように考えさせる説話も数多くあるようです。

例えば、狐と葡萄畑の話では、柵に囲まれたぶどう畑のぶどうを狐が痩せて突破してたらふくぶどうを食べるという話があるのですが、これには続きがあり、たらふく食べた狐は柵から出られなくなりどうしよう?という事態に陥ります。

普通に考えると

①今すぐ食べたぶどうを吐き出して柵から逃げる。

②漁師に見つかる可能性があるが、なんとか柵を通れるようになるまで身を潜める。

の2択なのですが、答えはそのどちらでもなし。

きつねはそもそもどうすれば良かったのか?や①と②のそれぞれのリスクとリターンを考えさせるなど段階に応じてでしょうが、適度なリスクというのを学んでいくそうです。

なかなか難しい判断を子どもにもさせるわけですね。
日本ではこれまで重視されてこなかった教育といえるかもしれません。

ビジネスに通じるレハレハの精神

すべてを捨てて、自分で身を立てることが重要

そして話はビジネスにも及んでいます。

「レハレハ」という言葉は、著者曰くLet’s go with everything left.(財産も土地も捨てて、身一つで新しいところへ行け)という言葉だそうです。

名だたるユダヤ系企業の中には、既存分野を捨てて新たな分野を切り開きながら生き残っている企業が複数あるのですが、そういった転換あってこそ生きながらえるということのようです。

個人の点からいえば得られたものに執着せず、すべては塵に帰するものなのだから、自分がなぜ生を受けたのか、何をその人生において全うすべきなのか?を真剣に考えて実行せよということのようです。

その意味で、人間は豪華な食事を食べるために生きているわけではないので、カシュルートといったユダヤ教の食事規定が存在するとのこと。

ユダヤ教の食事規定は、いろんな宗教がある中でも厳格に守ろうとするとかなり大変だったりします。

Eat poorly, Think richly.という言葉があるぐらいで、飽食が人生を過つことがあることから食事規定は厳しいとのこと。
(まぁ、著者自身も大病をしてからの反省だそうで、日本人の熱心な宗教者ってこういうパターンが意外と多いので時折やることやってんじゃんと思わなくもないですが、敬虔なユダヤ教徒は世俗の誘惑には陥らないのだそうで、そういった人は尊敬しますね。)

形のないものを大事にするという意味では、日本でも家族愛とか最たるものでこのあたりは万国共通だなぁと思いました。

いずれにせよ、タルムードはすべて読もうとすると大変な分量なので、そのエッセンスを知るという意味では良書だなと思いました。

ご興味ある方はぜひお手にとってみてくださいね。


 

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