資産運用をしていると、つい「投資」とか「節税」といった言葉が目について、資産運用コーナーに立ち寄ることが多かった私。
それゆえ、経済の本質的な部分はあまりよく知らずにこれまできてしまいました。
でも、行動経済学などが取り上げられるようになり、少し資産運用コーナーから「経済学」コーナーへと足を伸ばしているところ。
とはいっても統計などはチンプンカンプンなので、分かりやすい入門編からと思ってこちらの書籍を手にとりました。
学生に向けての語り口調なので、誰にでも親しみやすく読みやすい行動経済学に触れる機会になる書籍です。
意思決定は環境によって決まる!?
実は「選ばされている」可能性も!
最初からかなりセンセーショナルな内容でした。
私たちが下している意思決定は、環境によって決まっているとのこと。
アンケートや調査でも実は、「選ばされている」可能性があるそうです。
特に人間は、最初のフォーマットが正しいと考えてしまうクセがあるそうで、つまりデフォルト設定を楽と勝手に考えてしまうそうです!(実に怖いですね・・・)
事例としては、ヨーロッパに導入されている臓器提供カードがあがっていました。
以下の選択肢がある場合、人はどちらの内容でもチェックをしないとのこと。
- 「臓器提供プログラムに参加を希望する人はチェックしてください」
- 「臓器提供プログラムに参加を希望しない人はチェックしてください」
オプトイン・オプトアウト方式というそうなのですが、デフォルトが良いものだと勝手に思ってしまうそう。
以下に人間が非合理な選択肢をしてしまう存在かという好事例ですね。
他にもさまざまな事例により、初期設定に疑いを持たないゆえに起こりうる不合理な選択が紹介されていて、知らぬ間にいろいろやってしまっていそうだなとか、疑う姿勢は重要だなと感じました。
行動経済学を知れば恋愛も成就!?
感情という悩ましい存在
ちなみに、この部分をちらっと見てしまったので、この本を読んでしまったのですが(笑)
ここでは、有名な吊り橋効果などのお話が書かれていました。
いわゆるドキドキを好きの感情に勘違いしてしまうのと同様、感情の発端を読み間違えてしまうのが人間とのことでした。
でも、それならそれで、幸せな勘違いをしておくのも悪くないのかな?と思う昨今。
また、トロッコ問題についても言及がありました。
(https://www.irasutoya.com/より)
こちらは、線路に5人がいる線路と1人がいる線路があるとして
Q1 レバーを引くことで電車が進む方向を5人の方から1人の方にできる場合レバーを引くか?
多くの学生さんは、ここでYESと回答するそうです。
その方がより多くの人が救えるため、1人を犠牲にしてもかまわないという合理的な選択ができるとのこと。
しかし、状況が変わり、5人が線路にいるところ電車が突っ込んでくるとして
Q2 1人の人間を突き落とすことでストッパーとなる場合、その1人を落とすか?
となると、誰もが自分が殺人者になりたくないと押さない結論を出す。
Q1もQ2も合理的に5人という最大数を救うにはかわりないのに、行動は異なるというのは確かに面白いですね。
(もちろん、人間として自分に降りかかるリスクを考えた時、トロッコ問題は自分一人の保身という意味ではとても合理的な結果を導き出しているといえるのですが・・・)
しかし、人間は自分の感情に流されてしまい、思考も役立たずという意味では不合理な行動をとりがちといえるのでしょうね。
お金と仕事の不思議な関係
「無料」が嬉しかったり悲しかったり・・・
そして、最後にとても厄介なのがお金との関係性です。
どうしても、価格が大きいものを買うときほどに、割引率などを気にしないといった人間の特性などについて触れられています。
何より衝撃だったのは、「無料であること」の影響力でした。
最近は無料のものが増えていますが、収益を上げているアプリのほとんどが無料のものなのだそう。
無料のアプリにいくつかのトラップがあり、少額課金がされるようになっていて利益につながっているそうで、すごく興味深かったです。
かたや、仕事に関してはやりがいを重視することもあり、無料でやる方が低賃金で仕事をさせられた時よりも幸福度が高いという結果も出ているのだそう。
無料だと嬉しいこともあり、無料に群がってしまうという悲しい人間の性も目の当たりにするという感じで、ちょっぴり切ない部分でもあります。
きちんとモノの価値がわかる存在でいたいなぁって思うばかりですね。
行動経済学を楽しく学びたい人におすすめ
ただし、体系立てた話にはなっていないのでご注意を
ということで、読み物として行動経済学の一端を学ぶことができる良い書籍だと思います。ダイエットに成功するのは?など興味深い内容を含んでいますので、ぜひ手にとって読んでみてくださいね。
残念な点としては、「行動経済学」の面白い部分を抜粋したような形なので、有名な説とかばかりの羅列で体系的な話にはなっていない点。
より深く、行動経済学を学びたい人には物足りない内容と呼べるでしょう。
でも、最初の一歩としては読みやすいし、このような講義だったら受けてみたい!と思えるのではないかな?と思います。
大学の講義としても魅力的な内容になっているので、対話形式の楽しさをぜひ味わってみてください。