【書評】インドの処世譚『ヒトーパデーシャ』にみるお金etc.へのまなざし

最近、金融教育について考えることが多いSayasayanです。

基本的に古今東西、子ども向けのお話の中に人生において大事なことは昔話等に書いてあるとは思っておりまして。

そういうところをきっかけにするのは一つかなぁと思うんですよね。

特にインドの説話とかには、「それ言っちゃう!?」みたいなことも書いてあったりします。

そこで今日は、いつもとちょっとだけ違う書評ということでインドの処世術が書かれている『ヒトーパデーシャ』をご紹介します。

人生におけるちょっと世知辛い真実をご堪能いただければ幸いです。

ヒトーパデーシャ―処世の教え (岩波文庫 赤 61-1)

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※ちなみに、『ヒトーパデーシャ』は今新刊では買えないかと思います。

中古品はまだ古いけれど手に入るかな・・・といった程度です。

英語でなら、サイトとかで読める機会もあるんですけどねぇ、日本語で読める機会は少なくなっていくのかな・・・と思うところアリの書籍でもあります。

まずは予備知識&読者想定について

一部の選ばれし人材だけが読める本(笑)

おすすめしたいようで、おすすめできないところが実はある(笑)困った良書ちゃんなのですが、なぜかといえば問題点の一つは、この本明確な読者想定があります

インドへの偏愛ぶりは以前にブログにも書いておりますので、それはひとまず置いておいて。

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古代よりインド共和国が成立するまでなんだかんだと影響著しいのがカースト制度という身分制度です。(今は共和国憲法に「カースト」という言葉がおどるだけですので、古臭い考え方ではあるんですけれども。)

繰り返しになりますが、かつてインドにおいて強い影響力を持っていた身分制度、これが教育にも深く関わっていました。

(出典:英会話ラボ

今回重要なのは、上位カーストと後進カースト(下位カースト)の差

平易にいえば、上位3カーストはアーリア人、下位カーストはそのアーリア人に征服されたドラヴィダ系の人々ということ。

かつて、きちんとした教育が受けられたのはこの上位カーストのみであり、教育の差が身分格差を象徴し、経済格差を生んでいた好例でもあるということです。

上位3カーストに属する子どもたちは、12〜13歳くらいでウパナヤナ(成人式みたいなもの)を受け、バラモンなどの元で勉強していました。

まさに知識の差があらゆる差を埋めないための処方箋でもあったわけですね、あなおそろしや・・・。

そして、特に教育されていたのが、上位3カーストの中でもクシャトリヤと呼ばれる王族・貴族階級でした。

帝王学といえば聞こえはいいのかもしれないのですが、ちょうど司祭階級のバラモンと庶民であるヴァイシャの間ということもあり、中間管理職的な位置づけというのも大きいです。

いわゆる国家運営の担当グループなので、以下のような配慮も求められていました。

  • 司祭階級であるバラモンを扶養する義務
  • クシャトリヤとしての自覚と人間関係の構築
  • ヴァイシャ以下をコントロールするための技術的素養etc.

数えだしたらキリがないのですが、なかなかに八方美人でなければならず、代々受け継ぐ土地や財産を守らなければいけないエリートですので、学ぶべき内容も結構多くて綺麗事ばかりではないことが本を読むと伺いしれます。

というわけで、『ヒトーパデーシャ』も例に漏れず、クシャトリヤに属する有力な子女たちの読みものという読者想定が大前提にあります。

一部の選ばれた人たち向けなので、一般人の私が読むとちょっと腹の立つことも書いてありますが(笑)現代にも通じる部分がありますので、その点は先に心の準備をしていただけると良いかもしれません。

読みづらいのは枠構造と論理展開

子ども向けのはずなのですが・・・神様異名多すぎ問題も

(出典:Frames mart

そして、前置きが長くて恐縮なのですが、12〜13歳くらいの子ども向けで、きちんと日本語に訳されていますが、はっきり言って読みづらいです。

時間つぶされたくない!って人にはおすすめしません(笑)

日本人にはなじみのないインドの神様も登場したりします。

ほとんど有名どころなので、シヴァ神のご登場とかが多いんですけど、なにせ異名で登場するので後ろについている訳注を見ないと誰だよ!?ってなります。

(ちなみにインドっぽく上記絵画を挿入してみました。シヴァ神と奥さんパールバティーと2人の子ども、象頭のガネーシャ&インドラです。シヴァ神は力が強いので力の象徴として黒く(青黒く)描かれます。)

ひとまず異名などは解説がついているし、話の本筋とは関係ないので読み飛ばせるといえば読み飛ばせるのですが、インドの説話の厄介なところは、メインストーリーの中に挿話がたっぷり入っている点

すぐ本筋とは違う別の話になるので、話が追いづらいのですよね・・・。(日本語ですら苦労します。)

挿話は大抵寓話であり、いわゆるたとえ話です。

動物たちが大活躍するので、そんなことが現実に起こることはないのですが、寓話はインドの論理構造としてはとても大事なポイントです。

なぜならば、何かを論証するときに三段論法をとることが多く(こういうの難しいからはしょりたいのですが、一応・・・)簡単に言うと、何か言いたいことがあるときに、たいてい主題→理由→喩例(理論の補強部分)と話を展開します。

それゆえ、処世術について説明している『ヒトーパデーシャ』の中で、例えば「友人は選ぶべきである」という主張があるとすると、「悪友はろくな話を持ってこないから」という理由が出てきて、「山犬と鹿と烏の話にあるように云々」と寓話が出てくるという形になっています。

うん、分かりやすいというか分かりにくいというか・・・そんな煩雑さも魅力といえば魅力なのですがね。

現実的で残酷な話も多いです

結局どっちやねん!の話もあります

(出典:The Siddha Within)

ようやく本題ですね、実際の本の中身ということなのですが、メインストーリーはスダルシャナ王(素晴らしい知見を持つという名前なので優秀なのでしょうね)という王様が、王子たち(こっちはちょっぴりバカっぽい)の教育をヴィシュヌシャルマンという学者にお願いして、王子達を立派に教育しましたというお話です。(上記挿絵などが書籍などにはよく入っています。寓話では動物達がお友達になったり仲違いしたりで、よくしゃべります(笑))

クシャトリヤの子弟が読者ということで、結構あるある設定ではあります。

その中で語られることは以下の4点です。

  • 優れた友人たちを持つ方法
  • 友人といかに仲違いするのか(友人達と友好な関係を築くため失敗例を学ぶ)
  • 戦争の話(仲違いからの発展版。クシャトリヤは支配者側でありかつ戦争となれば率先して戦地に赴く戦闘階級でもあるため、心構え等かなり主要部分)
  • 講和の話(戦争の後は必ず講和が結ばれるのでこれも基礎知識的なもの)

国政に関わる話にまで最後はつながるのですが、実は長いのは最初の「(良き)友人を得る方法」部分です。

これは色々な真理を指し示していて興味深いです。

なんだかんだで人間は周りにどんな人がいるかによって人生が変わるということを言っているわけですからね。

よく自己啓発本でも言われていることではありますが、そんな真理がズバズバ書かれている感じです。

今回特にぐさっときたのは、結局教育も分かる者に語り、分からない者には語るなという部分かなぁ。

分からない者に語ったところで、その人は失敗すると責任転嫁してくる。教える相手は選ぶべし」とのことです。

こんな話を先生は生徒にしながら、生徒の自尊心を育むのだなぁとも読みながら思いました。(そうは言ってもなるべく多くの人に正しい知識をと効率悪いことをしちゃうのが先生なんですが・・・)

最後にお金の話もしておかないと、ですが、まず冒頭にあるのは以下の詩です。

学問こそは最上の財宝なりと人はいう。

価(あたい)量れず、尽きもせず、奪わるることもなきゆえに。

これは一番好きなところで前もつぶやいた気がします。

それとこちらの詩も資産運用をされている方向けかもしれません。

貯蓄は常になすべきも、過度の貯蓄は避けよかし。

貯蓄の習性(さが)を持ちしため、弓に斃れし者を見よ。

これに対する喩例は、

鹿を仕留めた狩人がイノシシを見つけて、イノシシもゲットしようと弓を放ったら、イノシシが大事なアソコに突進。

イノシシも弓があたり、イノシシ・鹿・狩人が一箇所で身悶える。

その様子を見た山犬がやってきて、獲物にありつこうとするが、先々のことを考えて、ひとまず動物の腱でできた大して美味しくない狩人の弓をまとめていた網を食べる。

弓がびよ〜んと跳ね返ってきて山犬の心臓に弓が刺さって即死。

なんともいえない結末です・・・(笑)

こんな話が延々と続きますので、好きな人もいればそうでない人もいるかもしれないですね。

似たような話も出てきますが、浮気をした女性でも、うまく切り抜けたパターンとうまく切り抜けられなかったパターンもあったりと知恵があれば解決できるってこと!?浮気アリナシ、どっち!?みたいな話もあります。

もともと口承で伝わっていたこととかいろんな要素があり、話は重複していたり、なんだか相反する内容もあったり・・・それゆえ何度読んでも難しく、学びがあったりする内容です。

たまにはこういう本も、学びが深くておすすめしたいところです。

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