最近は投資熱といいますか、多くの人がNISAやiDeCoなどを始めてきているような気がします。
そんな中で、株式を保有するってどういうことなのか?を考えさせられた第9回目のきんゆうの歴史シリーズ講座のレポートです。
日本では渋澤栄一さんが第一国立銀行を設立する際、株式会社制度を持ち込んだという前回のお話。
それゆえ、どうして株式を保有するのに、会社が倒産しても株主は出資額を失うだけなのか?といったことについては曖昧なまま来ているような・・・
これは欧米ではしっかりと議論されてきたにもかかわらず、日本は仕組みだけが先に来てしまったからという側面もありそうです。
そこで今回は株式会社の成立とその背景にある熱い議論、そしてクラウドファンディングといった新しい金融の仕組みについて教えていただきました。
今回は株式会社制度って、とっても画期的かつ人間の欲望うずまく中からできたものだというお話です。
ある意味、労働者でもありながら資本家にもなれる日本ってすごいのかも!?と人生考えさせられるお話でした。
Debt(負債)とEquity(持分契約)は似て非なるもの
モノには所有権が発生し、人には所有権が発生しない!?
そもそも、資金の調達の方法として、借金と株式って何が違うの?というところから。
結論からいえば、構造自体はそんなに違いはなく、いわゆる契約内容に違いがあるというのが大きなポイント。
借金のことはDebt(負債)、株式はEquity(持分契約)といいますが、お金を貸す貸主とお金を借りる借主がいるところまでは基本的に一緒。
お金を出資してもらったらその記録である借用証書(I own you略してIOU)を発行するのも一緒。
借主が株式会社、貸主が投資家(株主)と考えれば基本的に関係性は負債と変わらないのですね。
ただし、Equity(持分契約)の場合、IOUは規格化されていて「返済期限が設けられていない」し、「精算時(倒産時)に財産が生じた場合はプラスであれば持分に応じて配分、マイナス(他からの借金等)の場合は劣後した地位によって株主は出資額以上の負債を負わない」といったことがあらかじめ決められている点が大きな相違点。
株主は会社の持ち主と言われることがありますが、正直どの程度持ち主であるのか?が最初に決まっているわけです。
所有権の所在ということになりますが、じゃあ株主がその企業の所有者となるのか?といえば答えは一言ではなかなか言えないといった感じ。
だいたい議決権も大株主でもなければあまり意味はないですものね。
そもそも、所有権の問題は株式会社が「法人」であることにも関わっているとのこと。
法人は個人同様「人」として扱われるものなので、いろんな物質的なモノに対して所有の概念が発生するのに対し、本質的に他の誰かが所有権を主張できるものではないのだそうです。
法人の財産一つとっても、決定権は支配的株主にあるといえばあるけれど、あくまでも財産は法人に帰属するものなのだとか。
古来より、「人」は「(他)人」に対して所有権を持たないのであって誰も制限とかできないものなのですね。
ということで、ワンマン社長などが「俺の会社が〜」と言うこともあるかもしれないけれど、そういう時はちょっと大丈夫かな?と思った方が良いのかもしれません(笑)
株主であろうと、創業者であろうと、社長であろうと、法人格の所有者であるかといえば一概には言えないということでした。
株式会社の萌芽は中世のベニスから
リスク&リターンがどんどん大きくなってきたのが現代社会
さて、そんな複雑な現在の株式会社制度ですが、株主会社ができた経緯というのは意外にシンプルで、人間の欲望と駆け引きの結果といった歴史のお話へ。
株式会社の原型は、ビザンツ帝国の影響が強い中世のベネチア共和国でできたそうです。
当時のベネチア共和国は、地中海交易の拠点として繁栄を極めていたのですが、やはり航海による貿易は大きなリスクを伴うものでした。
航海自体が危険で、最悪の場合命を失うこともあったわけですから、貴族や大商人は航海に出掛けたくない・・・
そこで、お金のない無産市民に航海に行ってもらおうということで航海1回ごとに出資者がお金を出し合い、航海が成功した暁には、8割利益が出資者に分配されるというコメンダという仕組みを生み出したそうです。
利益8割が出資者に持っていかれるというのは多い気がしますが、その分失敗しても資金の返却が求められなかったため、多くの無産市民がその契約に応じたそうです。
出資者は失敗の保険代として多くのリターンを享受する形ということで、一旗あげたい若者には魅力的に映る制度だったようです。
若者に失敗を許す雰囲気なくして、リスクをとったことをするか?という今の時代にも通じるところがありますね。
クラウドファンディングはDebtかEquityか
いつかそのうち証券取引所がなくなる日も・・・?
ベネチアは繁栄を極めますが、死線を超えてのしあがってきたかつても若者たちと旧来の貴族・大商人の間の対立などから没落していくことになります。
また、コメンダも1回の航海ごとの出資という形であったため、継続性がなかったとのこと。(つまり事業性がなかった。)
事業となるまで(株式会社がうまれるまで)には、費用回収が1個人では困難となるような大事業を行うようになる大航海時代、そして東インド会社の登場を待つことに。
やがて、アメリカでは特許状など特別なものを必要とせず、イギリスからの独立を果たすと各州はこぞって企業を誘致し経済的な発展へとつき進んでいったとのこと。
その意味では株式会社によってできたのがアメリカという国だとのお話でした。
カーネギーやロックフェラーといった大富豪が登場するも、大きくなりすぎた法人は手に負えなくなり解体させられていく・・・そんな歴史を我々は繰り返しているようです。
そして、株式会社という仕組みも、欧米ではイギリスで株式会社法が成立するまで、株主の有限責任について賛成派(J.S.ミルなど)と反対派(アダム・スミスなど)が議論を交わし続けてできたということでした。
こうして、現在まで続く株式会社ができてきたわけですが、最近は新しい資金調達方法としてクラウドファンディングというのがあり、何らかのプロジェクトに対して、不特定多数の出資者が小口の資金を提供する仕組みがあります。
新しい資金提供の形なのですが、主なタイプは以下の通りです。
- 寄付型(Donation)
ちなみに純粋な寄付であれば寄付控除の対象。 - 購入型
非金銭型でDebtの性格をもつ。(一般的にはそのプロジェクトのストーリーなどソフトコンテンツを購入しているので普通にお金を貸しているというより消費?かなと個人的には思っています。) - 貸付型
融資型、いわゆるソーシャルレンディング。Debtといっても良い。(これも最近は返金など契約がなされていることがあるので、個人的に純粋なDebtではない気がします。) - 事業投資型
ファンド型、Equity。 - 株式型
未公開株投資型、Equity。
こうしたより自由な金融の形ができてくるということは、やがて企業の株価もアマゾンやメルカリで購入できちゃう自由な時代がくるかも!?ということでもあるというお話が印象的でした。(ちなみに購入できないのは、単に法律があるからとのこと。)
やがて、個人の属性や性格とかで株価が変動するなんてこともあるかも・・・?
証券取引所を経由せずに株式のやりとりをする未来も遠くないのかもしれませんね。
いよいよ、次回は最終回。
戦後ざっくり70年くらいのお話、証券取引所で人がやりとりをしていた頃のお話も聞けるとのことです。
最後までしっかり完走したいと思います。
レポートの最終回もぜひお楽しみに!ここまで読んでいただいてありがとうございました。