よく学校教育の期間に、「経済のことやましてや資産運用の話なんて学んでこなかった」という声はよく聞かされます。
多くの人が言うぐらいですから、そうした実感が強いのでしょうね。
実際に私もごくごく普通の田舎の公立校で育ちましたので、習ったかな?と思うことは多いです。
今は教える立場になったので、習ってないなんて言わせないぞ〜と思って授業していますが、このあたりは先生方の意識や学校の取り組み方によっても異なるのでいわゆるマチマチな状況になっているのかもしれません。(受験指導校なんて、政治・経済は形だけってこともありますしね・・・)
とはいえ、最近の教科書や資料集は今の成人が受けたものよりも改良されているのは間違いないのでちょっとご紹介を。(そりゃ紙媒体の教科書なんて・・・とか言いたいことはいっぱいあるけれど、それはさておき)
教科書の中から、きちんと現代の社会を考える上で大事なことを考えていきたいものですね。
まずは家計のお話から、中学生で学ぶ経済シリーズちょこっとずつまとめていきます(笑)
最初にやるのは家計の収入と支出
身近な経済から学ぶことはいっぱい
現在、存在している中学生用教科書で、社会科の中でも経済を学ぶのは公民分野です。
公民という言葉が、なかなかこれでなじめない言葉だよなぁと思いますが、現代社会を生きる上でとても重要な政治と経済のことについて学びます。
そしてたいていの教科書で最初にやるのは身近な経済活動である家計の話です。
家族や個人など消費生活を営む単位を家計と呼びます。
会社員や公務員の家計では給料が、農家や個人商店などの場合は事業で得た利益が主な収入(=所得)であって、支出のうちに生活に必要な財やサービスに対する支出を消費支出と呼びます。
教科書では、さらに収入−消費支出=貯蓄となっていて、貯蓄から、銀行預金・生命保険料などの支払いが行われ、将来の支出への備えをすると明記されています。
限られた収入を有効に活用するために、消費や貯蓄を合理的に考える必要があるとまで書いてあるので、いつも思います。
「資産運用セミナーとかでいつも聞くやつや〜」(笑)
収入−支出=貯蓄
大人にならないと切羽詰らないからみんな聞き逃すんですかね・・・。
お金の使い道を考えよう
このあたりは数字が現実味があるようでないような・・・
東京書籍『新しい社会公民』では、家計について「お金の使い道を考えよう」ということで、30代の経済状況についても示されています。
もともとの資料は統計局ホームページから知られるものですが、教科書用に分かりやすい表になっています。
出典元は、家計調査年報(平成25年)ということで、このあたりはどうしても教科書の特性上データが古いですが、34歳以下の単独世帯の1ヶ月間の実収入のふり分けということで、こんな数字が出ています。
平均年齢27.0歳、実収入307,973円というのは実質的な数字として妥当なラインでしょうかね。
教科書では15歳の生徒に10年後のこととして・・・
Q1. 一人暮らしの家庭で自分ならどのように項目に金額を配分するか。
Q2. 自分の項目を発表し、グループで話し合い、気づいた点や改善すべき点はどこか。
Q3. 改善点などのためにどんな生活を送ればいいか。
Q4. 支出について考えるときにはどのようなことが大切か。
これらのことを考えさせることになっています。
ひとまず収入を増やすことではなく、支出をどのように抑えるかを考えさせるというものですね。
人生でいくらくらいお金が必要なのか
結婚・出産・教育費・老後資金などなど・・・
そして、資料集などには人生でいくらくらいお金が必要になるのか?という試算がのっていたりするのですが、この数字は結構えぐいかなって思っています。
そもそも文部科学省資料etc.という表記からして、どこが出典なのか怪しい・・・(中学生の資料種だからといってバカにしないで〜という話ですよねぇ。)
人間の一生でかかるお金、例えば以下のような数字が出ていました。
- 婚約〜新婚生活:約542万円
- 出産・育児:約91万円
- 建売住宅:約3338万円
- 幼稚園3年間:公立約68万円、私立約145万円
- 小学校6年間:公立約193万円、私立約916万円
- 中学校3年間:公立約143万円、私立約398万円
- 高等学校3年間:公立約135万円、私立約311万円
- 大学4年間:公立約524万円、私立文系約684万円、私立理系約812万円
- 老後の生活(20年間):約5948万円
実際のところ、このような数字だけ出されても、実感わかないというのが本音ですよねぇ。
そもそも、教育を受けている中学生たちに、将来これだけお金かかるんだよ〜と言ってもピンとこないでしょうっていうのが教育者的にも思うところからなぁ。
あとは、生き方も多様化しているので、これから生徒たちがどこの国でどんな生活するか分からないしで、こうした通り一辺倒の世界を説明するのって意外と辛いものです(笑)
まぁ、でもお金があれば選択肢も増えるので、これぐらいかかるんだぞ!ちゃんと備えないとね!くらいに思ってもらえれば御の字なのかな?
数字のレトリックは気にしたいところ
お金の数字に惑わされない教育が必要ですね
ということで、所感としては教科書や資料集には結構当たり前なんだけど、大事なことが書いてあるということ。
ただ、その出てくる具体的な数字が生徒のイメージしにくいものであることと、そんなにかかる!?みたいなアバウトさが、教師としても教えづらいところという話ですね。
そもそも、「婚約〜新婚生活」ってどこまで新婚生活?って思いますし(笑)
婚約=結納の金額がかかるってこと?、結婚=結婚式の費用ってこと?、新婚生活=新しい家電買うとか引っ越し代とか入ってる?みたいなツッコミどころ満載です。
何より、結婚するだけなら本当は大した経費もかからないという本質的なことを見落としてしまう・・・教育ってそういう意味では恐ろしいですよねぇ。(自戒を込めて)
もう、大手の結婚サイトの情報に踊らされてかけますね・・・踏みとどまりたいけれど、教材がこれでは難しい・・・。
結婚が決まったら、次に頭に浮かぶのがお金のことでは?そんな皆さんに婚約から新生活まで、結婚全般にかかる費用がどれくらいか…
あと、正直建売住宅の金額も、逆にこの価格の物件ある?みたいな金額に。
市場の変動もあるので、今の教え子が大人になった時にこの金額だろうか・・・とかは思いますね。
家買うかわからないし、ずっと賃貸かもしれないし、海外飛び回っちゃう子もいたりとか複数不動産所有とか、あらゆる可能性を考えるとむ〜んって考えてしまう数字です。
将来なんて分からないから深く突っ込めないっていうのもあるんですよねぇ。
あとは、中学生って数字をそのまま暗記とかしちゃってくるから、こうした数字は安易に触れたくなかったり(笑)(いや、その数字覚えて何かなるわけじゃないから〜っていつも焦ります。)
そして何より難しいのは、今教育を受けている側である生徒に、将来の教育費用とか老後の話とかピンとくるかねって感じ。
幸か不幸か今教えている子たちは、比較的一定家庭レベルで統一されているので、あまり家計のことを考える機会もない感じなんですよね。
切羽詰まった家庭じゃないと肌感覚としてお金のこと考えないのがいいのか悪いのか・・・。
もちろん、家庭教育でしっかり金融教育している家庭もいることは知っていますが、とかく授業は上滑りしがちです(汗)
本当は、全体授業が実情に合わない教育方法だから、これを変えていくのが良いんでしょうけど。
それに、大人が実は知らずに通り過ぎちゃった内容なので、生徒に言っても通り過ぎがちってところでしょうかね。
金融教育は、一回聞いたくらいで身につくものではないので、やはり自助努力の学習が現状必要ということでしょうね。
世の多くのご家庭で、こうした現状を踏まえて金融教育が行き届きますように。
引き続き、結構大事なことはすでに義務教育の中学校で学ぶってことをぼちぼちお伝えしていければと思います。
みなさまのご参考になれば幸いです。