先日2018年8月9日(木)・10日(金)に先生のための「夏休み経済教室」in東京(高校対象)が開催されました。(東証では中学対象も行われており、こちらは8月15日・16日開催になっています。(→先生のための経済教室ウェブサイトにて確認できます。)
会場は、東京証券取引所2階東証ホールで、参加者も100人を超える盛況ぶり。
公民科の先生方を中心に首都圏で教鞭をとる教員の先生に向けての話ということで、とても有意義な時間を過ごさせてもらいました。
備忘録ですが、情報共有させていただければ幸いです。
ちなみに1日目の次第は以下の通りです。
(出典元:東証セミナー・イベント情報)
Basic 基礎から学ぶ「上場会社」
地域の上場企業分布などが興味深かったです
まず、最初は東京証券取引所の金融リテラシーサポート部より、上場会社についてのお話でした。(個人投資家としては、実は一番興味深かったです(笑))
主なお話は以下の通り。
- 証券取引所・市況について
- 株式市場への上場について
- 株価について
- 上場会社管理・不公正取引について
上場企業について学ぶ上で、とても基礎的で重要なお話で、日本取引所グループ(JPX)がどのような組織であるかというのを深く学ぶことができました。
IPOの話や東証一部・二部の構成などの説明を通じ、現在の日本取引所グループが重点を置いている事業分野であることが知られました。
今後も引き続き、IPO案件を増やしていきたいという傾向、市場替などにも積極的に行っていこうという姿勢が感じられました。
(「先生」と呼ばれる人々の手前でしたので、不正などにも厳しく対応しておりますという引き締まった態度も好感度高まりました(笑))
株式上場については、今話題のメルカリのインタビューなども紹介されており、上場のメリット・デメリット両方解説されていましたね。
とにかく、東京証券取引所の仕事ぶりを知ることができたのが良かったです。(珍しく株主目線)
個人的に驚きだったのは、日本三大都市圏を形成する東京・大阪・名古屋に上場企業も集中していること。当たり前と思われるかもしれませんが、今は横浜なども台頭してきているので、今後この構図が変わってくるのでは?とか考える材料を提供していただきました。
持続的な社会を実現するための経済教育
前世代への分配と未来への投資の重要性
2 時間目(そのような言い方をしていておかしかった(笑))は、日本大学経済学部の先生のご講演でした。経済学部1年生向けの教養科目のようなお話で、一気に学生気分に♪
興味深かったのは、村上龍著『希望の国のエクソダス』(文春文庫)を活用した授業実践(及び集団的意思決定の試行)でした。
『希望の国のエクソダス』は、中学生80万人が集団不登校を起こすところから始まる物語なのですが、ネットワークビジネスをしたり、中央集権とは独立した集団での生活を開始したりと「もしかしたらありうるかも?」というような読み物として面白い内容です。
いかんせん、物語なのでそこは差し引くとして、重要なのは、生産されたもののうちで、比率は違えど、「自己投資・前世代への分配・次世代への教育」が社会では行われているということ。
そして、ある世代が自己投資をしすぎると生産全体が低下するのですが、その少ない総生産のうちで、解説策として前世代への分配をなくすとどうなるのか?という問題についての説明は目からウロコでした。
要するに世代間での理解が重要であり、持続可能な社会を形成したければ、前世代への分配も次世代への教育も疎かにしてはいけないという話でした。
教員向けですので、若年層への具体的な教育方法について持続可能な社会のためにできる例を紹介していただき、とても深い学びを得ました。
(浅い学びとしては、前世代は教育できないのか・・・?っていう部分も(笑))
人は必ず死ぬので「今」を生き、政府は死なないので「未来」に生きる。
この差異の意味がよく分かっていなかったのですが、今回はその意味がよく分かる内容で、仕事に対しても投資に対しても応用できる内容を学べてよかったです。
現役公立教員による授業案提案
日本は教員にお金をかけるべき(笑)
3時間目は、現役の公立高校教員の先生方が同じテーマについて異なる授業実践をされたという報告でした。(ここは、通常の現役教員色めき立つところですが、個人的には熱い・・・と傍観するしかない状況でした。)
テーマは主権者教育についてで、要するに選挙に行きなさい!と生徒たちに実感させるための授業といった感じでした。もちろん、頭ごなしではなく、選挙に行くことが自分にとってどういう意味を持つのか?ということを考えさせられる授業実践の紹介でした。
具体的に模擬投票をさせてみたり、グループワークをさせたりと学習への興味を掻き立てるという意味では、先生方の熱意あふれるやりとりに感服するばかりでした。
授業の内容も動画などで解説していただいたのでとても分かり易かったです。他の学校の雰囲気も分かったのも収穫でしたかね。
教育にお金がなかなか回らない日本ですが、やはり先生にお金を出したら今以上に教材研究をしたり、知見を広めるためにお金を使うだろうになぁと。(もちろん、その意味では私自身もレベルアップのためにお金を使いたいと思います。)
まぁ、このセクションは実際に教育をするときに役立つポイントなどを教えていただけたので、今後の自分の授業などに反映させていきたいなと思わされました。
財政と租税を根本から考える➖私達はなぜ税金を納めるのかー
納税は義務であり権利であるという視点
4時間目は、京都大学の先生からの税金についてのお話。正確にいうと、税金の概念と税金を中心とした欧米諸国の経済史の時間でした。(そして日本がどのように影響を受けたのかというところまで!)
面白い現象なのですが、政治経済などで税金のことを話す場合は、つい「納税は国民の義務」と言いがちで、それを義務だからと片付けがち。
逆に世界史などで税金のことを話す場合は、つい「税金は国が搾り取るもの」と言いがちで、同じことを話しているのに、生徒にも混乱させるし、意義を見い出させにくいというお話は本当に考えさせられました。
あと、欧米諸国の近現代史を税金という軸で横断的にみたとき、今まで経済史って教えにくいな・・・って思っていた(なんでフランスは革命で政権変わるのか?とか)のですが、その謎が少し解明しましたね。
ホッブズやロック、アダム=スミスやシュンペーターなど経済学者がたくさん出てきて、彼らの書籍の一節なども知れていろいろ読みたい本が増えました(笑)
そして日本の近代化についても触れられており、日本人にとって税金制度が借り物であり、そのために導入も早かったけど主権者意識に結びつきにくい状況も生み出しているのではないか?という提言なども興味深かったです。
そして、「納税は義務でもあるけど、見方を変えれば権利である」という意味では、国民のために税金が使われているか?っていう意識を育てる方策も必要だなぁとつくづく痛感しました。(それが難しいんですけどね・・・)
大学の講義を受けているようで楽しかったです
学びの重要性を再確認させてもらいました
とにかく、大学の先生のお話は、大学の講義のようで学生気分で楽しませていただきました。
やはり学びを続ける姿勢は何よりも大事ですね。
教員の方々はわざわざ遠方からいらっしゃる方も多く、意識高い系が集まっていて集中して学べたのもよかったです。
ちょっと知り合いを作るという雰囲気よりかは学会のような雰囲気に近いですが、経済のことを勉強してこなかった!という人には深い学びが得られる機会のように感じられました。
講義形式なので、正直90分の講義を4つも聞き続けるのは辛い(だが、教師というものはよくも悪くも聞き続けられる人が多すぎ)のですが、一般の方でも十分楽しめる内容なのではないかなと思いました。
また、全体的に参考文献の紹介が多かったので、さらに学びを深めるのに良かったです。
経済史で教える書籍とか読んでみたいなと素直に思いました。
夏休みに良い刺激を得られる機会でした。望むらくはあと懇親会でしたでしょうか(笑)